
令和5年の民法改正で「相続財産管理人」は名称変更された?
令和5年の民法改正で「相続財産管理人」は名称変更された?
専門家でも誤解しやすいポイントを徹底解説
相続の実務に携わっていると、最近とても多い質問があります。
「相続財産管理人って、令和5年の民法改正で名前が“相続財産清算人”に変わったんですか?」
結論から言うと——
現時点では “名称変更された” と解説する専門家が増えている一方で、
法務省の一次資料で明確に「名称変更」と断定する条文は見つかりません。
つまり、
“名称変更と見る説” と “別制度として併存する説” が混在している状態
というのが実務の実感です。
この記事では、
・なぜ名称変更の話が広まっているのか
・実際に条文や専門家の情報はどうなっているのか
・不動産実務ではどう対応すべきか
をわかりやすく整理します。
■ 1. そもそも「名称変更された」という情報の根拠は?
令和3年に成立した民法改正が 令和5年4月1日から施行 されました。
この改正では、
-
管理制度の見直し
-
相続財産の保存行為・改良行為の規定整備
-
清算手続の統合・整理
など、多数の見直しが行われています。
この改正を受け、海外の相続制度に近づける形で
「相続財産の清算人」 の記述や言及が増えました。
弁護士・司法書士の専門サイトでは、以下のように説明が見られます。
✔「令和5年の施行で従来の“相続財産管理人”の名称が “相続財産清算人”に変更された」
✔「改正後の民法952条に“清算人を選任しなければならない”と明記されている」
✔「管理人制度が改められ、清算人に一本化された」
このため、実務家の間でも
「管理人=旧名称、清算人=新名称」
という捉え方が広がっています。
■ 2. しかし、法務省の一次資料では名称変更を明記していない
一方で、
法務省・官報・施行法などの一次資料では、
「相続財産管理人の名称を相続財産清算人に変更する」
という明確な条文は見つかっていません。
理由は次の3つです。
① 改正の主眼は「名称変更」ではなく制度整理
管理・探索・換価処分などの役割分担を整理する形で「清算人」という概念が補強されただけ。
② 現場で交付される書類に“管理人”表記が残っている
家庭裁判所の審判書でも、
・相続財産管理人
・相続財産清算人
どちらの表記もケースにより混在しているため、名称変更が一律ではない。
③ 裁判所・登記官の運用が完全に統一されているわけではない
改正直後は特に、現場の表記ゆれがしばらく続きます。
■ 3. なぜここまで誤解が広がっているのか?
主な理由は次の3つ。
● ① 名称が非常に似ている
管理人
清算人
…字面的にほぼ同じで、実務内容も一部似ている。
● ② どちらも家庭裁判所が選任する
申立書・公告・管理業務など共通点が多い。
● ③ 改正解説の書き方が統一されていない
解説サイトによっては「名称変更」と断言しているところもあるため混乱が生じる。
■ 4. 不動産実務ではどう理解すべきか?
結論としては次のように捉えるのが最も安全です。
✨【実務対応の最適解】
▼ ① 書類に記載された“用語をそのまま使う”
-
家庭裁判所の選任審判書
-
登記申請書
-
銀行の手続き書類
に応じて、正式名称として記載されている名称を採用するのが正しい運用。
家庭裁判所の選任審判書
登記申請書
銀行の手続き書類
に応じて、正式名称として記載されている名称を採用するのが正しい運用。
▼ ② ブログや資料では「改正により“清算人”表記が増えている」と注記
実務の混乱を避けるため、次のように書くのがベストです。
※令和5年施行の民法改正により、専門家の間では
「相続財産管理人=相続財産清算人」
とする解説が増えていますが、
実務上は両名称が併存しており、
裁判所書類に記載された名称を優先します。
▼ ③ 重要なのは「名称」ではなく“権限がどう変わったか”
改正により、
・財産の保存行為
・改良行為
・清算手続きの簡素化
などが明文化されました。
不動産売却の現場では、
売却権限の有無・裁判所の許可範囲
をチェックすることが最重要です。
■ 5. 【まとめ】名称変更は“あり得るが、まだ完全統一ではない”
整理するとこうです。
-
専門家サイトの多く:
➡「名称変更された」と紹介している -
法務省・裁判所の公式文書:
➡ 名称変更と断定する明記は見つからない -
実務の現場:
➡ 「管理人」と「清算人」が両方使われている -
最も確実な対応:
➡ 書類の表記に合わせる
つまり、
“名称変更されたと説明される理由はあるが、法令上の定義が完全に切り替わったとは言い切れない”
というのが正確です。
